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ステントグラフト

大動脈瘤に対する新しい治療法 ステントグラフト

腹部大動脈瘤の外科治療は、これまでは主に開腹手術により動脈瘤を人工血管で取り換える人工血管置換術が行われてきました。
良好な手術成績で優れた方法と言えますが、心血管・脳血管障害や呼吸器・腎機能障害などの合併症を持つ患者さんや、開腹手術を 受けた既往のある患者さん、あるいはご高齢の患者さんなどでは、リスクが高いと考えられる場合があります。
このような患者さんに対して、従来の手術に比べより体への負担が少なく治療が行えるように開発されたのがステントグラフト留置術です。

ステントグラフトとは

人工血管(グラフト)に金属骨格(ステント)を縫い付けてあるものです。細い管(シース)の中につぶした状態で格納してあり、 大腿動脈などから血管内に挿入します。

大動脈瘤の内腔で展開し、金属骨格の拡張力で人工血管を広がった状態に維持しそのまま留置します。

いまなぜステントグラフトなのか

これまで日本国内で行われてきたほとんどのステントグラフト治療では、手作業でステントと人工血管を縫い合わせ、特注のシースに手作業で詰め込んで、 滅菌作業を行う必要がありました。このため各病院や医師の間でステントグラフトの質に違いがあったり、耐久性に問題があったりして安定した成績 が出せない状態が続いていました。

欧米では早い段階から既製の製品が使われており、現在では安定した成績が得られるようになっています。

日本でも06年にようやく既製の腹部大動脈瘤用ステントグラフトの保険償還が認められるようになりました。07年からは、実施医基準を満たした医師に限り、 この治療を行うことができるようになりました。当院では07年6月から、ステントグラフト留置術を開始しており、良好な結果が得られています。

ステントグラフト治療の利点

鼠径部を切開し大腿動脈を露出するのみで開腹を要しないため、手術後早い段階で経口摂取が可能です。創の痛みも軽く、呼吸器合併症を持つ患者さんやご高齢の患者さんにもより安全であるといえます。入院期間は術後数日から1週間と短くなっています。

ステントグラフト治療の欠点

残念ながらすべての患者さんにこの治療法を行うことができるわけではありません。瘤の位合併症として、ステントグラフトの位置がずれたり 血液がグラフト外に漏れたりする可能性があります。このため手術後の定期的な検査と長期のフォローアップが必要とされています。

また何らかの不具合をきたした際には開腹手術に移行しなくてはならないことがありますが、ステントグラフトが挿入されている場合には 手術操作がやや困難になるとされています。

ステントグラフトの展望

アメリカでは年間約3万例の腹部大動脈瘤治療が行われており、その約半数にステントグラフト治療が行われています。日本でも将来的には約30%は ステントグラフト治療が行われるようになると考えられています(2005年度は6099例中127例/2.1%のみ)。

今後新しいステントグラフトの登場で治療成績はさらに向上し、適応が一層拡大されていくと考えられます。また胸部大動脈瘤用のステントグラフトも 近いうちに日本に導入される予定となっています。このためステントグラフトによる大動脈瘤治療は確実に増加していくことは間違いありません。

当院では積極的にこの治療法を導入し、より患者さんの負担が少なく安全な治療法として確立して参ります。お気軽にお問い合せ下さい。

腹部ステントグラフト ─ 成績と適応基準

大動脈瘤に対する血管内治療が行われるようになって20年足らずですが、全世界でその普及スピードはめざましいものがあります。 とくに企業製のステントグラフトは改良が進み、安全性、耐久性の面で格段の性能向上が得られています。 日本でも2007年4月から企業製ステントグラフトが保険償還となり、全国の一般病院でも使用できるようになりました。
ただ、日本では腹部大動脈瘤におけるステントグラフト手術の適応に際し、「比較的安全に外科手術が行える場合には外科手術を第一選択とすること」という制限が設けられています。 これは、日本における腹部大動脈瘤外科手術の成績が優れていることやステントグラフト手術の長期成績がいまだ不明であることに起因していると考えられます。 しかしその"比較的安全に"の内容が細かく規定されていないことから、解釈の難しさやあいまいさを指摘されているのも事実です。
このため当院では、いままでのステントグラフト治療に関する論文を参考にして、現時点での適応基準をつくりました。

腹部ステントグラフト-5年間の治療成績 -海外の論文から-

現在世界的に最も多く使用されているのは、Cook社製Zenith AAA Stentgraftです。その5年間の成績が2008年7月に公表されましたのでその要約を示します。
[Zenith abdominal aortic aneurysm endovascular graft  Roy K,Greenberg,et al. Cleveland Clinic Foundation, Journal of Vascular Surgery 2008;48:1-9]

患者数 2000年1月から2003年6月までに治療を行った736名
期間 5年間の追跡調査
結果
  1. 解剖学的に治療に向いていない群は長期生存率が低い
  2. エンドリーク(もれ現象)は12〜14%。
  3. そのほかの不具合(ずれ現象・骨格破損・脚閉塞など)は、2〜6%。
  4. 瘤拡大は31名(4.2%)にみられ、破裂したのは1名(0.1%)のみ。
  5. 何らかの追加治療を要したものは153名(20.8%)
    エンドリーク 96名(13.0%)
    脚の狭窄閉塞 21名(2.9%)
    開腹手術へ移行 8名(1.1%)
    腎動脈に対する治療 14名(1.9%)など
結論 この内容から、経過観察中になんらかの追加治療を要する可能性は少なからずあり、とくに若年者においては観察期間がさらに長くなるため、その可能性は高くなると考えられます。 一方で、解剖学的に治療に適している形態であればステントグラフトの長期成績は良好であると言うことができます。

胸部大動脈瘤に対するステントグラフトはじまる

 大動脈瘤に対する血管内治療-ステントグラフト-は、1991年に始まり現在に至るまで種々の改良が積み重ねられてきています。 この結果、安全性も耐久性も高い、市販の製品が登場し、これからの大動脈瘤に対する治療戦略を大きく変えつつあります。

特に胸部大動脈瘤では、大きな侵襲を伴う従来の外科手術に代わる有効な治療法としてステントグラフト治療に対する期待は大きく、日本でも以前から行われてきました。 しかし、各施設での手作り(自作)ステントグラフトであったため、グラフトの均一性・耐久性はまちまちで、安定した成績が得られてはいないのが現状でした。

2005年3月に米国FDAが初めて企業製品Gore TAGを認可、本邦でも2008年7月に厚生労働省がこれを認可し使用可能となりました。 この企業製品の登場で、より一層安全で確実な治療法として広がりを見せています。

当院でも2008年7月の厚生労働省認可直後より、この企業製品を用いた胸部大動脈瘤に対するステントグラフト治療を開始しました。 2009年2月末までに10名の患者さんに行い、良好な結果が得られています。

当院での成績

現在世界的に最も多く使用されているのは、Cook社製Zenith AAA Stentgraftです。その5年間の成績が2008年7月に公表されましたのでその要約を示します。
[Zenith abdominal aortic aneurysm endovascular graft  Roy K,Greenberg,et al. Cleveland Clinic Foundation, Journal of Vascular Surgery 2008;48:1-9]

患者数 10名
平均年齢 74.4歳(52〜82歳)
80歳以上 5名
部位

下行大動脈のみ
遠位弓部+下行
胸腹部

4名
5名
1名

原疾患

真性瘤
慢性大動脈解離(偽腔拡大型)

5名
5名

死亡 なし
合併症発生

脊髄虚血
血管合併症
小脳梗塞
左下肢筋力低下

なし
なし
1名
2名

追加治療 なし (Type?エンドリーク 1名)

ご高齢の方やさまざまな合併疾患を持った方に対しても、低侵襲で安全に治療を行うことができました。今後もステントグラフト治療に積極的に取り組み、 一層の成績向上を目指して行きたいと考えています。

しかし現在のところステントグラフトの適応となるのは、胸部大動脈のうちの「下行大動脈」でなおかつ「真性動脈瘤」に限定されています。 したがって、弓部大動脈や胸腹部大動脈にかかるもの、大動脈解離や外傷による大動脈断裂、手術後の仮性動脈瘤などの疾患は適応にはなっていません。 これは、認可申請のために行った臨床試験が真性動脈瘤のみを対象としたためであり、上述したそのほかの大動脈の部位や疾患では有効でないという意味ではありません。 実際に、弓部や胸腹部にかかる大動脈瘤であっても、十分なLanding Zone(着地距離)を確保する工夫をすることで安全に行うことができ、どのような疾患であっても 成績は良好であるとする報告が多く見られています。また実際には多くの症例(ほぼ半数)で真性動脈瘤以外の疾患で使用されているというのが現状です。 有効性・耐久性が明らかにされていくことで、近いうちに適応となる部位や疾患が広がっていくものと考えます。

胸部大動脈瘤
ステントグラフトを留置
大動脈瘤が消失
術後CT
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