呼吸器外科Thoracic Surgery
呼吸器外科では、①保険適用の、②最新で、③負担の少ない(低侵襲もしくは縮小手術)治療を行うことを第一に考えて治療法を選択しています。 従来、胸腔鏡手術には3ヶ所の創が必要でしたが、2019年より1ヶ所の創で手術を行う単孔式手術を熊本県内でいちはやく行いました。同時に、胸腔鏡手術を凌駕する利点を持つロボット支援手術も行っています。
一方、進行がんに対する拡大手術や、手術、放射線、抗がん剤、分子標的剤、免疫チェックポイント阻害剤などを用いた集学的治療(いろいろな専門家が集まり、知恵を出し合って行う治療)を行っています。患者さんごとに病気の状態は異なります。このため、お一人お一人に最適な治療法を提案します。
単孔式手術
3~4cmの創1か所で手術を行います。最大の利点は術後疼痛を抑えられることです。対象は、気胸、膿胸、肺がん、 転移性肺腫瘍、良性肺腫瘍、感染性肺疾患、先天性肺疾患、縦隔腫瘍などです。
ロボット支援手術
胸の中に自分の腕がある開胸手術のイメージで手術をすることが出来ます。このため、リンパ節郭清や気管支縫合に 威力を発揮します。対象は、肺がん、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍です。(2024年6月以降は良性疾患も保険適用となります。)
縮小手術
私たちは区域切除という通常より肺を温存でき、かつ根治性と機能温存を両立させる術式を数多く行ってきました。対象は肺切除術、肺がん、転移性肺腫瘍、良性腫瘍、感染性肺疾患、先天性肺疾患です。
拡大手術
進行がんに対する合併切除を多数経験してきました。当院には心臓血管外科、消化器外科、耳鼻咽喉科、整形外科などが揃っており、力を合わせることでさまざまな拡大手術に対応可能です。
チーム医療
救急及びがん治療においては集学的治療がとても重要です。救急科、外傷外科、呼吸器内科、腫瘍内科、放射線科と 連携して治療を行います。術後の療養期間も安心して療養ください。
主な疾患・治療法
症状
症状が出てからでは根治は難しい場合が多いです。日頃からの健康診断受診をお勧めします。肺がんの早期発見に胸部CTが有用であるといわれています。
検査
CT、腫瘍マーカー、PET、気管支鏡、超音波ガイド下気管支鏡生検、CTガイド生検、胸腔鏡生検など。結果により、抗がん剤などの薬物療法、放射線、外科治療や、その組み合わせを決定します。
治療
肺切除術(多くの場合は側臥位(横向き)で手術を行います)
- 縮小手術
- 区域切除、部分切除
- 標準手術
- 葉切除
- 拡大手術
- 合併切除を伴う肺切除
左右の肺はそれぞれ、3個と2個の葉から構成されます。肺がんに対する標準手術は葉切除です。葉は2個から5個の区域から構成されます。比較的早期もしくは合併症を有している場合は縮小手術である、区域切除や部分切除を検討します。区域切除は機能温存に加え、葉切除より長生きできるというデータが発表されました。拡大手術では、がんが浸潤した周囲の臓器(例えば、肋骨など)を合併切除します。
- 開胸手術
- 拡大手術、緊急手術や出血時の対応など難易度の高いと思われる手術などに行います。
- 胸腔鏡手術
- 多孔式手術、単孔式手術、ロボット手術(図2)
図2を表示
単孔式手術は創の数が1個であり、従来の多孔式手術に比べてより痛みが少ないと報告されています。ロボット手術は数々の技術が導入されており、従来の胸腔鏡手術を凌駕する可能性があります。
症状
胸痛、発熱などありますが、無症状のことが多いです。日頃からの健康診断受診をお勧めします。
検査
CT、腫瘍マーカー、MRI、(PET)、(超音波ガイド下気管支鏡生検)、CTガイド生検、胸腔鏡生検など。結果により経過観察、抗がん剤などの薬物療法、放射線、外科治療や、その組み合わせを決定します。
治療
腫瘍切除術 ※仰臥位(仰向け)もしくは側臥位(横向き)で手術を行います。
胸骨縦切開
胸腔鏡手術(剣状突起下アプローチ手術、剣状突起下アプローチ ロボット手術)
開胸手術
胸腔鏡手術(多孔式手術、単孔式手術、ロボット手術)(図2)※肺がんと比較して創の位置および数が異なります。
症状
多くは無症状で、CTなどで発見されます。
検査
CT、腫瘍マーカー、MRI、PET、気管支鏡、超音波ガイド下気管支鏡生検、CTガイド生検、胸腔鏡生検など。治療法は もともとの診療科で決定します。
治療
集学的治療の一部として、切除を行います。切除以外の治療はもともと治療していた診療科で行います。標準治療は 部分切除で、十分な腫瘍を取るために区域切除や葉切除を行うことがあります(図1、2を参照してください)。 多くの方で単孔式手術やロボット手術が可能です。
症状
胸痛、呼吸困難。無症状で発見されることもあります。アスベストとの関連が指摘されています。
検査
CT、腫瘍マーカー、MRI、PET、気管支鏡、超音波ガイド下気管支鏡生検、CTガイド生検、胸腔鏡生検など。
治療
診断をつけるための胸腔鏡生検や集学的治療の一部として、胸膜肺摘除(胸膜と肺を同時に切除する)や胸膜切除・肺剝皮術(胸腔内の胸膜をすべて切除し、肺実質を温存する)を行います。 化学療法や放射線治療は呼吸器内科で行います。
症状
胸痛、発熱、呼吸困難。無症状で発見されることもあります。
検査
CT、気管支鏡、超音波ガイド下気管支鏡生検、CTガイド生検、胸腔鏡生検など。
治療
- 01
- 膿胸
胸腔鏡掻爬術、醸膿膜切除、開窓術、胸郭成形術など(単孔式胸腔鏡手術から開胸の手術まで幅広く行います。初期のものであれば単孔式手術で手術可能です。)
- 02
- 肺化膿症、肺真菌症
図1、2で示したような肺切除を行います。ただし、ロボット手術は保険適用外です。
症状
胸痛、呼吸困難。
検査
レントゲン、CT。
治療
肋骨と肺の間に空気が貯まる病態です。原因、状況に応じて、治療法が異なります。治療法として、安静、脱気 (空気を胸の中から注射器で吸い出す)、ドレナージ(チューブを胸の中に入れて空気を吸い出す)、癒着術 (胸の中に薬を入れて、肋骨と肺を引っ付ける)、EWS(気管支鏡で原因の気管支に詰め物をいれ、気胸を改善 させる方法、当院でも施行可能です)手術などがあります。若い方で、明らかな原因がなく気胸を繰り返す場合や ドレナージを行っても改善しない場合は単孔式手術を中心とした胸腔鏡手術が適応となります。気胸になる明らかな 原因があり、手術が有効と判断した場合も手術を行います。
症状
病気によって異なります。無症状で発見されることもあります。
検査
造影CTなど。
治療
主に胸腔鏡で病変の切除を行います。
症状
手掌の大量の汗。
検査
CTなど。
治療
交感神経遮断術 ※当院では行っておりませんので、他院をご紹介します。
症状
胸の中央がへこんでいる。
検査
CTなど。
治療
当院では小児は小児外科、それ以上は形成外科が担当しています。
実績
手術実績
図1
これは右肺を側面からみた3DCTです。
赤が肺動脈、青が肺静脈、黄が気管支を表します。右肺は上葉(薄黄部分)、中葉(薄赤部分)、下葉(薄青部分)の3個の葉から構成されます。
さらに上葉は、点線で示すようにS1、S2、S3の3個の区域から構成されます。基本的に葉切除では1個の葉を、区域切除では1個の区域を切除します。部分切除では病変より、ある程度の距離を保って切除を行います。
図2
側臥位(横向き)における多孔式、単孔式、ロボット胸腔鏡手術の創を示します。単孔式では1か所の孔で手術が可能です。ロボット手術では3~4本のロボットアームが入る孔が必要ですが、ロボットアームには関節があり、あたかも自分の手が胸腔内に入ったように操作できます。
図3
仰臥位(仰向け)における胸骨縦切開、剣状突起下アプローチ手術、剣状突起下アプローチ ロボット手術の創を示します。正中経路(体の真ん中)の創は痛みが側臥位より残りにくいです。特に剣状突起下アプローチではその効果が大きくなります。