熊本赤十字病院

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国際救援活動

日本赤十字社の国際救援の基地として

私たちが考える国際医療救援

国際医療救援の活動は、戦傷・災害外科とプライマリー・ヘルス・ケア(PHC)を原点とした医療が主となります。 古代ギリシャの医師ヒポクラテスが「外科医になりたければ戦場に行け」と述べたように、戦傷外科は創傷治療をいかに成功させるかという点で外科の基本です。

一方、PHCに携わることは、社会全体における医療の位置付けの理解に役立ちます。 すなわち、国際医療救援は、単に相手の救援活動を行うだけでなく、救援活動を通じて私達が現地の人々、現地の医療人から学ぶ貴重な機会です。 国際救援を通じて学んだことは、私達が日常行なっている先進医療を基礎からより充実させることに役立ちます。

  • つくる

    当院は、救援手段の研究や救援資機材の開発を進めています。 また、国際医療救援チームが使用する資機材の開発・管理と、研究機関や民間の企業に対し国内外の社会問題に対する新たなソリューションの提案を行っています。

  • そだてる

    当院は、日本赤十字社の各施設と共同して国際医療救援要員の育成と技術向上を目的とした研修会を開催しています。

  • やくだてる

    当院は、これまでに294名以上の職員を国際赤十字の救援事業などに派遣しています。

つくる

救援機材の研究・開発

ERU(Emergency Response Unit)とは?

ERUとは、大規模災害が起こった際、被災者を迅速かつ効果的に救援するための、救援資機材と要員をあわせた国際医療救援チームの名称です。

ERU資機材について

当院は日本赤十字社のERU資機材(仮設のクリニックや病院を設置するための機材)の開発を続けています。
資機材には、医薬品の他、テント、発電機、給水機材、通信機材、生活物資等が含まれます。
日本赤十字社では、クリニック型・モバイル型・病院型の3種類のERU資機材を整備しています。
現在、日本赤十字社のERU資機材は熊本赤十字病院と大阪赤十字病院、シンガポールの倉庫で保管し、国内外の災害に備えています。

仮設診療所資機材 + 緊急救援のために訓練された要員 = Unit
救援技術研究について

当院は、国内外での救援活動を通して得た知見を、研究機関や民間企業との共同研究に活用してきました。水や電気がなくても可動するモバイルトイレや、電気で動く医療車、ドローンを用いた医薬品の搬送、携帯の位置情報を用いた災害時の孤立者の特定などの研究成果は国内外の救援の現場において、実践的な貢献を重ねています。

そだてる

国際救援要員の養成

国際救援要員・開発協力要員の養成システム

日本赤十字社の国際救援・開発協力事業に参加するためには、外国語の習得の他、研修会への参加が義務付けられています。 当院は日本、アジア各国から参加者を募り、国際救援要員の研修や事業管理手法の研修などを開催しています。

その他、国際医療救援要員の研修会も行なっており、この研修会を修了した国内外の赤十字スタッフが海外の災害救援で活躍しています。

英語能力、必要な技能の研修後に派遣されます。
  • 国際医療救援(ERU)チームの研修会

    日本赤十字社の海外医療救援チームの研修会を開催しています。 この研修会を修了した国内外の赤十字スタッフが海外の災害救援で活躍しています。

  • 事業管理手法の研修会

    国際的な人道支援機関で標準的に使用されている事業管理手法(PCM手法)の研修を開催しています。

  • 海外での現地研修

    各国赤十字が開催している様々な分野の研修会に要員を派遣し、各分野での専門家の育成にも力を入れています。

やくだてる

国際救援要員の派遣

要員の派遣

当院は、昭和55年(1980年)から令和6年(2024年)までに294名の職員を国際赤十字の救援事業などに派遣しています。

要員派遣一覧(1981年~2023年)

派遣国 事業名 期間 人数
シエラレオネ共和国 シエラレオネ・中央こども病院サービス向上プロジェクト 2023 2名
南スーダン共和国 南スーダン紛争犠牲者救援事業 2020/2021 2名
ナイジェリア連邦共和国 ナイジェリア紛争犠牲者支援事業 2020 1名
ヨルダン・ハシミテ王国 中東地域紛争犠牲者支援事業 2020 1名
パキスタン・イスラム共和国 パキスタン紛争犠牲者救援事業 2019 1名
レバノン共和国 パレスチナ赤新月社医療支援事業 2019/2021 2名
バングラデシュ人民共和国 バングラデシュ南部避難民保健医療支援事業 2019 1名
バングラデシュ人民共和国 バングラデシュ南部避難民支援事業 2018/2019 10名
ネパール連邦民主共和国 ネパール地震被災者救援事業 2016 7名
南スーダン共和国  南スーダン紛争犠牲者救援事業 2016/2017/2018/2019 6名
イラク共和国 イラク紛争犠牲者救援事業 2015/2016/2018 5名
シエラレオネ共和国 小児看護技術強化事業 2015/2017 2名
ヨルダン・ハシミテ王国 シリア難民救援事業 2015 1名
レバノン共和国 シリア難民救援現地調査 2015 1名
ハイチ共和国 ハイチ地震被災者救援事業 2015 1名
シエラレオネ共和国 母子保健医療支援調査事業 2015 2名
ニカラグア共和国 JICAインターンシッププログラム 2014 1名
フィリピン共和国  世界保健機構(WHO)西太平洋事務局派遣 2014 1名
フィリピン共和国  基礎保健RDフィリピン南部台風災害救援事業 2014 2名
フィリピン共和国 フィリピン台風救援事業 2014/2015 5名
イラク共和国 クルド地域医療市場調査班   2013 2名
ウガンダ共和国  ウガンダ北部地区病院支援事業   2013 1名
ハイチ共和国 コレラ罹患者救援事業  2012 5名
ハイチ共和国   ハイチ大地震救援事業 2011 9名
中華人民共和国 香港  基礎ERU研修会開催協力 2010 6名
チリ共和国   チリ地震被災者救援事業  2011 3名
チリ共和国   チリ地震被災者救援事業  2011 3名
パキスタン共和国  パキスタン紛争犠牲者救援事業   2010 1名
ジンバブエ共和国  コレラ被災者救援事業 2009/2010 7名
イラン共和国   在外邦人救急法等普及事業調査 2009 6名
ミャンマー連邦共和国 サイクロン被災者救援事業 2009 1名
イラク共和国 イラク医療技術交流事業 2008/2009/2010/2011
2012/2013/2014/2015
54名
スリランカ民主社会主義共和国 スマトラ島沖地震津波復興被災者救援事業  2008 1名
ケニア共和国 ケニア共和国洪水災害救援事業 2007 1名
インドネシア共和国 ジャワ島中部地震被災者救援事業 2007 2名
パキスタン共和国 パキスタン地震被災者救援事業   2006 9名
インドネシア共和国 スマトラ島沖地震津波復興被災者救援事業    2006 20名
イラン共和国 イラン南東部地震被災者救援事業 2005 6名
イラク共和国 スレイマニア教育病院医療技術支援事業 2004/2005 5名
イラン共和国 イラク人道危機関連調査   2004 2名
タンザニア共和国 タンザニア難民支援事業 2004/2007/2008 3名
リベリア共和国 リベリア紛争犠牲者救援事業   2003 1名
イラン共和国  イラン地震被災者救援事業     2003/2004/2005 5名
ジンバブエ共和国 HIV/AIDS支援事業調査  2003/2004/2005 6名
インド インド西部地震被災者救援事業  2002 9名
エルサルバトル共和国 地震被災者救援事業 2002 1名
ペルー共和国    地震被害調査 2002 2名
シエラレオネ共和国  シエラレオネ紛争犠牲者救援事業 2002 1名
アフガニスタン共和国 アフガニスタン地震被災者救援事業 2002/2004 9名
インドネシア共和国 スマトラ島ベングル沖地震被災者救援事業 2001 1名
東ティモール民主共和国    東ティモール紛争難民救援事業 2000/2001/2002 5名
台湾 台湾地震被災者救援事業  2000 4名
スーダン共和国  スーダン紛争犠牲者救援事業   2000 1名
トルコ共和国 トルコ地震被災者救援事業 2000 1名
アルバニア共和国 アルバニア・コソボ難民救援事業 2000 1名
アフガニスタン共和国  アフガニスタン北東部地震被災者救援事業 1999 1名
ルワンダ共和国  ザイール東部紛争犠牲者救援事業 1997 1名
ケニア共和国  紛争犠牲者救援事業 1997 1名
ザイール共和国 紛争犠牲者救援事業 1995 1名
カンボジア王国 医療協力事業 1993 2名
シリア・アラブ共和国   湾岸戦争避難民救援事業 1992 2名
ケニア共和国  ケニア紛争犠牲者救援事業 1991 1名
ソビエト社会主義共和国連邦 地震被災者復興事業  1990 1名
パキスタン共和国 アフガン難民救援事業 1990/1994/1995/1997/2002 6名
ネパール連邦民主共和国 保健衛生事業  1987/1993 2名
スーダン共和国 干ばつ被災者救援事業 1986 1名
エチオピア連邦民主共和国 干ばつ被災者救援事業 1985 1名
マレーシア ベトナム難民救援事業 1981/1988/1989
1990/1991/1993
12名
タイ王国 カンボジア難民救援事業 1981/1983/1990 10名

国内救援活動

絶え間なく発生する自然災害に備えて
基幹災害拠点病院

当院は、熊本県の「基幹災害拠点病院」に指定されています。 基幹災害拠点病院は、県内や近県で地震・津波・台風・噴火等の災害が発生した場合に、災害医療を実施する地域災害拠点病院の機能を強化し、災害医療に関して県の中心的な役割を果たすもので、原則として都道府県に1ヶ所設置されています。
当院では、災害時においても切れ目のない医療を提供できるよう医療設備の備えやライフラインの確保、多数傷病者の受入れに関する訓練の実施など、さまざまな対策を行っています。

熊本赤十字病院は災害に8備えています

  • 01
    3日分

    353.2平方メートルの大容量で、院内生活用水を約3日分蓄えることができます。

  • 02
    食料
    3日分

    地下と8階の2か所にある食料用倉庫に患者食3食分×3日分を備蓄しています。

  • 03
    電力
    3,178kw

    非常用発電機を本館、救急棟、立体駐車場に設置し、停電時には自家発電に切替わることで、診療に必要な電力を継続して供給します。

  • 04
    ヘリ
    常時

    救急医療の専門医と看護師が同乗し、救急現場へ向かい、いち早く患者さんに救命医療を行います。

  • 05
    救援物資
    全国

    全国各所で発生した災害に迅速に対応できるよう平時から十分な物資を備蓄し、被災地へ支援することを目指しています。

  • 06
    院内設備

    災害発生時や感染症患者発生時などに患者収容スペースや診療スペースとして活用できるよう、整備しています。

  • 07
    特殊車両

    重篤傷病者に対し救命率を向上させるための効果的な初期治療を目的とした、特殊医療救護車両(ディザスターレスキュー)を整備しています。

  • 08
    全職員

    わたしたちは、苦しんでいる人を救いたいという思いを結集し、いかなる状況下でも、人間のいのちと健康、尊厳を守ります。

  • 訓練・研修
    • 常備救護班研修会

      日赤熊本は、常備救護班を9班編成し、有事に即応できる体制を整えています。
      平時の準備、被災地での活動、救護活動の心構えなどを研修しています。

    • トリアージ研修会

      職員の災害対応に関する知識の向上・技能維持を目的として実施しています。
      熊本県における災害対応強化及び各災害拠点病院・熊本県医師会との連携強化も目的に院外へも通知し、合同で研修を行っています。

    • 多数傷病者受入机上訓練

      地震を想定した多数傷病者受入の机上訓練を実施しています。
      「初動・患者の流れ・部門間の連携・情報の流れ」などの検証を行い、多数傷病者受入実働訓練につなげています。

    • 多数傷病者受入訓練

      大地震災害を想定し、救命救急センターで実働訓練を行います。
      毎年200人以上の職員が参加し、実際に近い想定でシミュレーションしています。

    • 特殊災害訓練

      CBRNE、新興感染症、サイバーに対応する訓練を実施しています。

    • 災害派遣チーム協働研修

      被災地での医療救護活動、災害対応への共通認識を目的に実施しています。
      災害時に協働する団体も参加。各団体の活動内容・目的を相互理解し、連携強化を図ります。

    • DMAT※に関する訓練

      基幹災害拠点病院として、DMATを整備し、積極的に訓練等に参加しています。 ※DMAT・・・災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team)の略称