熊本赤十字病院

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Comprehensive blood vessels center

メタボリックシンドロームや生活習慣病などが引き起こす全身の「血管病」を診療科の枠を超えて総合的、包括的に診断、治療を行うために開設しました。
「血管病」とは、閉塞性動脈硬化症・動脈瘤・静脈瘤・動静脈奇形・静脈奇形など、あらゆる疾患を含みます。放射線科と心臓血管外科が中心となり、循環器内科、脳神経外科、脳神経内科、整形外科がバックアップする、幅広い診療科で編成するチーム医療体制を整えています。
「血管病」を疑われる患者さんのゲートキーパーの役目を担うとともに、最新鋭の画像機器を駆使した診断とクオリティの高い専門的な治療を提供しています。

診療内容

血管外来は毎日オープンしています。主に血管内治療を放射線科の菅原医師が担当し、静脈疾患を心臓血管外科医師が担当します。毎週「血管カンファレンス」を行い、一人ひとりの患者さんに合った治療方針をチームで協議して最適な治療法を決定しています。
「血管病」の中の「閉塞性動脈硬化症」に対する国際的な診療指針である「TASCⅡ」を日本人向けに改定した熊本赤十字病院独自のガイドライン「TASCⅡに基づいた末梢動脈疾患治療ガイドライン」を策定し、これに則して診療を進めています。「閉塞性動脈硬化症」に対する治療法は、薬物治療の他に、バルーンやステントもしくはステントグラフトを用いた血管内治療と、人工血管や自己血管でバイパスを行う外科手術があります。患者さんの状態や病気によっては、二つの治療法を組み合わせた「ハイブリッド治療」も行っています。
「動脈瘤」や「動静脈奇形」に対してはコイルや液体による経カテーテル的塞栓術などを行い、静脈瘤に対しては主に外科的手術を施行しています。また、日本赤十字社熊本健康管理センターとタイアップしてはじまった「メタボ血管ドック」を全面的にバックアップしています。

院内動態

血管病患者の院内動態(現在)

冠動脈疾患や脳動脈瘤など特定の血管病以外はすべて総合血管センターに紹介され、
放射線診断科による適切な画像診断のもと、多くは受診日に治療方針が決定します。

血管内治療

3泊4日の入院で治療ができます。
※初日入院、2日目朝に血管内治療、治療翌日は合併症などないか確認、4日朝退院です。

局所麻酔を用いて、足の付け根の総大腿動脈に細い管を入れて治療します。血管内に管が入っても、痛くも痒くもありません。

退院後も、定期的に外来で経過観察します。

閉塞性動脈硬化症の原因は、主に「腸骨動脈」と「大腿動脈」における狭窄・閉塞に分けられます。
「腸骨動脈」の治療はほとんど血管内治療です。外科的バイパス術と比較し、治療成績は同等(スライド3)で、合併症がかなり少なくなります。
「大腿動脈」の治療は、病変が短ければ血管内治療、長ければ外科的バイパス術ですが、治療器具・材料の発展とともに、血管内治療の比率が増えています。当院では約8割が血管内治療で、成績も良好です

腸骨動脈&大腿動脈閉塞症例

左腸骨動脈完全閉塞の患者さんですが、従来は外科的バイパス術を施行していましたが、当院ではほとんど血管内治療を施行し、成功率は95%を超えます。

左総大腿動脈から膝窩動脈中枢側にかけて広範な動脈閉塞の患者さんですがの患者さんですが、動脈硬化性変化が強く、血管吻合が困難と考えられたため、外科的バイパス術は非適応と判断されました。このような患者さんに対しても血管内治療にて再開通が得られました。

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左膝窩動脈完全閉塞による足趾虚血壊疽

膝窩動脈閉塞による左足第一趾虚血壊疽の患者さんですが、血管内治療で閉塞部は再開通し、その後形成外科による治療が加わってほぼ元の状態に戻っています。

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縦隔腫瘍浸潤による左鎖骨下仮性動脈瘤

左鎖骨下動脈に腫瘍浸潤による仮性動脈瘤が形成され、破裂しかかっていました。破裂すると突然死となります。
左鎖骨下動脈にステント留置後、仮性動脈瘤内にコイルを置くことによって、破裂を防ぐことができました。

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左腎動脈瘤

腹腔内の動脈瘤も破裂すると3割以上が死亡すると言われています。当院では助かった患者さんはほとんどいません。治療する前に大量出血してしまうためです。
コイルを使用した血管内治療で完全に塞栓することができます。

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その他の血管内治療

肺動静脈奇形、皮下組織の静脈奇形、などの治療も行っています。
脳神経外科や神経内科との協力で、頸動脈狭窄や急性脳動脈塞栓に対する機械的血栓破砕術や吸引術なども施行しています。