熊本赤十字病院

Severe trauma center

当院の救命救急センターは、重症外傷のシームレスな診療を担う外傷外科を設置し、重症外傷センターとして重症な外傷患者の救命に当たっています。外傷外科が外傷蘇生・手術・集中治療などの治療方針の決定に広く関わり、専門診療科や他職種と部門間連携を行うことで、重症な患者へ確実な蘇生的治療を行い、救命率を向上できる様に日々取り組んでいます。

「コードレッド!」

時に全館放送でかかる緊急コールです。重症外傷は時間との戦いです。生命を救うための緊急治療の段階を経て、機能保全を目指した根本治療までの時間をいかに短縮できるかが重要なポイントです。「コードレッド」は、救急現場から重症外傷の方が搬入されるという情報が入った段階で宣言され、外傷治療に関わる各診療科の医師を救命救急センターに参集させるとともに、手術室や集中治療部門においても、緊急手術やその後の集中治療管理に対する準備を開始します。また、毎月1回開催される「トラウマ(外傷)カンファレンス」で、コードレッドが宣言された事例を振り返るとともに、重症外傷を負った方の救命率を向上させるための診療体制の整備等について議論を重ねています。

トラウマカンファレンス(症例検討会)

重症外傷患者診療においては、多職種・多診療科の連携によるシームレスな診療体制構築が必須であるため、症例の振り返りや外傷チームとして必要な外傷知識のupdateなどを、外傷関連各科医師、関係看護師などとともに毎月1回開催しています。問題点などあれば、その場で積極的な意見討論を行い、最善の治療法を検討しています。共に治療方針を共有し、外傷診療の質を保つためにも重要です。

人材育成・スキルアップ

日本外傷学会外傷専門医研修施設

日本外傷学会により、十分な重症外傷患者を受け入れ、指導体制と適切な診療体制を有する日本外傷学会専門医研修施設に認定されています。

外傷外科フェローシップ制度

2024年度より外傷診療へ興味のある医師のため外傷外科フェローシップの採用を開始しました。
緊急度や重症度の高い外傷に対して、迅速な治療優先度の判断を行うリーダーとなれる医師を育成します。プレホスピタルから集中治療まで、フェローの能力と希望を加味した修練プログラムを組んでおり、外傷診療の一連を学ぶ事ができます。

九州外傷カンファレンス

九州の外傷診療のレベル向上を目標に、2017年より佐賀大学と協調して開催しました。現在九州内7施設(健和会大手町病院、済生会福岡病院、佐賀大学病院、長崎大学病院、長崎医療センター、宮崎大学病院、熊本赤十字病院)に加え個人有志の参加者と共に、各施設での難しい症例を持ち寄りカンファレンスで振り返りを行っています。 各施設での設備上の制限や利点、診療の工夫、教育体制などを幅広く共有し、九州内の多くの施設が外傷診療のレベルを益々向上することを期待し積極的な意見交換を行っています。

外傷教育ワーキンググループ

院内の外傷診療整備と教育を目的として、救急外来看護師、手術室看護師、外傷外科医、救急医、救急外来事務 (臨時で血管造影室スタッフ、検査技師等)を中心に年間の教育計画や、診療プロトコール・マニュアル等の作成を行なっています。教育はこれまでに、体幹部外傷や頭部外傷のシミュレーション訓練、JNTECやSSTT等の院外研修報告会、他施設との合同カンファレンス、MMカンファレンス、講義や処置のトレーニング等多彩に行い、その対象も医師のみでなく他職種とし外傷診療の底上げに力を入れています。

初療室手術のシミュレーションの様子

多職種ワーキンググループの様子

Trauma Team Activation (TTA)/ Massive Transfusion protocol (MTP)

Trauma Team Activation (TTA)

重症外傷は時間との戦いです。救急現場から重症外傷の方の搬入情報が入った時点で外傷外科のオンコール医師が呼ばれ、複数部位にある損傷の治療優先度を決定し、外傷診療に関わるあらゆる科と戦略を共有して治療にあたります。治療戦略の決定の他にも蘇生的手術や輸血戦略に携わります。

Massive Transfusion protocol (MTP)

重症外傷患者の多くに外傷性凝固障害が存在すると言われ、いち早く輸血を開始できるように輸血をプロトコール化しています。検査技師を含む輸血チームによる製剤の管理、救急外来への常備輸血の配備などで迅速かつ安全で確実な輸血戦略に取り組んでいます。

院内の協力体制

外傷診療へ携わる複数科と2ヶ月に1回ほどの頻度で重症症例の振り返りを行い、次の診療へ繋げるためのディスカッションを行い、共通認識を育んでいます。集中治療科や外科とは日々の診療を共にし、外傷診療へ必要な知識と技能の向上を図っています。救急外来で手術が必要な際には手術室から応援看護師が駆けつけ、検査部の検査技師は平日日中にMTPが発動された際には、すぐに駆けつけ輸血製剤管理に参加します。この様に日常から有事にかけての部門間協力のもと、外傷診療が成り立っています。

実績