診療トピックス
お薬について知っておきたい正しい知識
- 2025.4.3 |
お薬には様々な種類があり、それぞれに飲み方(用法・用量)が決められていますので、処方の際は、薬剤師からの説明を十分に受けてからお薬をお受け取りください。
この記事では、服用時に薬の効果を最大限にするため、皆様に知ってほしい内容を記載しています。
目次 |
薬を飲むタイミング |
薬を飲み忘れた場合 |
お薬を飲むときの飲み物 |
お薬の保管方法 |
処方されたお薬の期限 |
お薬の飲み合わせについて |
抗がん剤を服用されている方へ |
副作用とその対処 |
おくすり手帳について |
お薬に関するQ&A |
飲むタイミング
一般的に、お薬は食後に飲むことが多いですが、お薬によっては、薬の吸収、効果や副作用を考慮して食前や食間など用法(飲むタイミング)が指定されます。
起床時 | : 起きてすぐ |
食直前 | : 食事開始の直前(いただきますの時) |
食前 | : 食事の約30分前 |
食間 | : 食事と食事の間(食後2時間程度) ※食事中に飲むことではありません |
食後 | : 食事終了から30分以内 |
食直後 | : 食事終了の直後 |
就寝前 | : 寝る約30分前~直前 |
頓服 | : 症状に応じて |
同じお薬でも食前・食後どちらの飲み方でもよい場合がありますので、薬を受け取る際に必ず説明を受けましょう。
飲み忘れた場合
一般的な飲み忘れの対応としては、決められた時間からそれほどたっていない場合は、気づいたときに飲みます。ただし、次に飲む時間が近い場合は、1回分をとばしてその次から決められた時間に飲んでください。忘れたからといって2回分をまとめて一度に飲まないようにしてください。
また、お薬によっては飲み忘れ時の対処法が異なることもあります。飲み忘れの時に備え、お薬をもらう時には対処法を医師や薬剤師に確認しておきましょう。
お薬を飲むときの飲み物
原則としてコップ1杯程度のお水または白湯で飲んでください。少量だとお薬が喉や食道にはりついて炎症や潰瘍を起こすおそれがあります。お薬の中には、水なしで飲める錠剤(口腔内崩壊錠(OD*錠))もあります。
また、お茶、牛乳、ジュースは薬の吸収や効果に影響を及ぼす場合がありますので、あらかじめ医師や薬剤師に確認しておきましょう。
*OD:Orally Disintegrating
お薬の保管方法
お薬は湿気や光、熱による影響を受けやすいため、高温・多湿・直射日光を避けて室温で保管してください。冷蔵庫で保管するように指示されたお薬は、凍らせないように注意してください。品質を維持するためにも定められた保管方法を遵守しましょう。小さいお子さんがいらっしゃる場合は、子どもの誤飲を防ぐため高い場所や鍵付きのケースに保管することをお勧めします。
また、使用期限が過ぎた薬は効果の減弱や変色の可能性があるため廃棄してください。
処方されたお薬の期限
医師から処方されたお薬は、特別な指示がない限り、処方された日数の間に飲むのが基本です。体の状態はそのときによって異なりますので、飲み残したお薬を自己判断で飲むことはやめましょう。
お薬の飲み合わせについて
複数のお薬を同時に飲む場合は、飲み合わせ(相互作用)に注意しましょう。お薬どうしが作用しあって効き目が強くなりすぎたり、弱くなったりすることがあります。また、一部の食品や飲み物でも、お薬の効果に影響を与える場合がありますので注意が必要です。
他の病院で処方されたお薬や市販のサプリメントなどを使用されている場合は、お薬手帳や商品名がわかるものを持参し、相互作用がないか必ず医師、薬剤師に相談してください。
抗がん剤を服用されている方
飲み間違いや自己中断は治療効果に影響を及ぼすだけではなく、重篤な副作用につながる可能性があります。必ず医師、薬剤師の指示に従ってください。
副作用とその対処
すべてのお薬は、効果(主作用)と副作用をあわせ持っています。お薬を正しく使うことで副作用のリスクを減らすことができますが、予想できない副作用が出ることもあります。副作用の程度によっては休薬や減量が必要な場合がありますので、あらかじめ医師や薬剤師に確認しておきましょう。
・副作用症状の例
○眠気、めまい、吐き気など
症状が軽度の場合は、ご自宅で様子を見て問題ありませんが、症状が続き日常生活に支障をきたす場合は処方された医療機関に相談しましょう。
○呼吸困難、全身の発疹や粘膜(口の中など)が赤くなる、意識レベルの低下、38度以上の発熱など
これらの症状が現れた場合は、すぐに医師または医療機関に連絡してください。
「おくすり手帳」について
「おくすり手帳」には、使用しているお薬に関する大切な情報が書かれています。複数の医療機関を受診しても、「お薬手帳」に情報がまとまっていると、飲み合わせやお薬の重複などをチェックしてもらえます。そのため、「お薬手帳」はひとつにまとめて、継続して記録するようにしてください。最近は、紙ではなくスマートホンで確認できる「お薬手帳アプリ」の利用も増えています。購入した市販薬やサプリメント・健康食品などのほか、過去のアレルギーや副作用歴なども記録しましょう。
「おくすり手帳」は常に携帯し、医療機関や薬局を利用する際には医師や薬剤師に見せてください。
お薬に関するQ&A
お薬に関する疑問についてお答えします。
Q 錠剤を割って飲むことは可能?噛んでも大丈夫ですか?
A 錠剤の中にはゆっくり溶けるように設計されたものや苦みをコーティングして飲みやすくしたものがあります。特に、ゆっくり溶けるように設計された錠剤は、割ったり噛んだりして飲むと、副作用が現れやすくなることがありますので、割ったり噛んだりして飲まないようにしてください。割線がある錠剤やOD錠(口腔内崩壊錠)は割って飲んでも大丈夫です。また、錠剤が大きいなどの理由で飲みづらい場合は、嚥下ゼリー等を利用すると良いでしょう。その他、お薬の飲み方でお困りのことがあれば薬剤師に相談してください。
Q 処方薬を他の人に譲ってもいいですか?
A 本人の症状や体質、合併症の有無などを考慮して処方されています。症状が同じでも他の人に適しているとは限らず、予期せぬ副作用が起きる可能性があります。また、成人には用いられても、小児や妊婦には使用できないお薬もあります。さらに、お薬の成分にアレルギー反応を示すためそのお薬が使えない人もいます。そのため、自分に処方されたお薬を他の人に譲ることはやめましょう。
Q 以前もらったお薬が家に残っています。使っても大丈夫ですか?
A 受診したときの症状、体重に対して処方されます。病状が同じだからといって、以前に使用して残った薬を自己判断で使用してはいけません。薬の保管状況によっては品質が低下している可能性もありますので、一度受診することをおすすめします。
Q 飲んですぐにお薬を吐き出したが、もう一回飲んだほうがよいですか?
A 薬を口に入れた直後(または5分以内)に大量に吐いて、お薬がそのまま出てしまった場合は、もう一回飲んでください。完全に飲みこんで30分以上経過した後、あるいは30分以内であっても吐いた量がわずかであった場合は、飲まずに様子をみてください。
Q 「頓服(とんぷく)」の薬をもらいました。何時間あけたらよいですか?
A 「頓服」とは、症状が出現した時だけ使用する用法の総称で、痛み止めや吐き気止めなどで汎用される用法です。とんぷくの場合は5~6時間程度あけて必要時に使用するのが一般的ですが、症状や薬の種類によって使用回数や投与間隔が異なります。使用時は、必ず医師の指示通りに使用してください。
Q お薬とアルコールとの相性は?
A お薬は肝臓で代謝される薬が多く、アルコールと一緒に摂取すると副作用が強く出る場合があります。
Q 赤ちゃんに粉薬を上手に飲ませる方法は?
A 粉薬を少量の水やぬるま湯で溶かし、スプーンやスポイトで少量ずつ口の奥に流し込む方法と、清潔な手のひらでごく少量(1~2滴)の水を加え、ペースト状にしたお薬を赤ちゃんの口の中(上顎や頬の内側)にこすりつけて飲ませる方法があります。
Q 坐薬を挿入後すぐに出てきてしまったら、どうしたらよいですか?
A 挿入直後に反射的に出てきた場合や、排便と一緒にそのままの形で坐薬が出てきた場合には、再度同じ量を挿入してください。20~30分経過して排便した場合は、既に大部分が吸収されている場合が多いため、新たな坐薬は使わず様子を見てください。
Q 妊娠中に、お薬は絶対飲んではいけないのですか?
A 妊娠中のお薬使用による赤ちゃんへの影響は、お薬の種類や妊娠の時期によって異なります。お薬によっては、赤ちゃんに影響があるため妊娠中は使用できないお薬もあります。一方で、お母さんの健康は赤ちゃんに直結しますので、お母さんの状態を良くするためにお薬が必要になる場合もあります。そのため、お薬のことは必ず医師に相談しましょう。また、現在、基礎疾患等でお薬を使用中の方は、妊娠前から医師に相談し、妊娠に備えると良いでしょう。
当院では、妊娠と薬外来(自費)で医師・薬剤師が相談にお答えしています。
お薬は使い方を間違えると、効果が減少するだけでなく、身体に悪影響を与える可能性があります。
正しい知識で効果的な服用を行いましょう。
熊本赤十字病院薬剤部 薬剤副部長(妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師) 秋吉 明子
調剤課長(がん専門薬剤師) 合澤 啓二