熊本赤十字病院

Medical topics

人工股関節手術に低侵襲を

膝や股関節は、軟骨のすり減りや関節の変形が進行すると日常生活に支障が出るほどの痛みが生じます。

その場合の有効な選択肢として、金属製の人工関節(インプラント)に置き換える、人工関節手術が挙げられます。

人工股関節手術の場合、関節までのアプローチ方法が主に前方・後方・前外側と3種類あり、従来の手術では後方からのアプローチが一般的でした。

後方アプローチの場合、大腿骨周辺を15cm〜20cmほど皮膚切開し、筋肉を切りながら関節に到達するのが特徴です。

 

当院の整形外科では、人工股関節手術(THA手術)において、侵襲性の低いAMIS(エーミス)(前方アプローチ)という手技を行うようになりました。

AMISは、筋腱を切離せず進入するため、術後疼痛が少なく早期回復が期待できます。

AMIS(エーミス)・・・前方最小侵襲手術(Anterior Minimally Invasive Surgery)

 

 

大腿近位の筋間(図・写真)を切開し、筋肉を避けながら関節に到達するのが特徴です。

 

AMISのメリット(従来の手術との比較)

 ・皮膚切開は10cm程度と傷口が小さい。

 ・筋肉を切らずに器具を挿入するため、術後の疼痛が少ない

 ・傷の痛みはあるが、10日前後で軽快する。

 ・痛みが少ないことから、歩行獲得も早い

 ・周囲の筋腱を温存するため、術後脱臼率が低い

 ・在院日数が短い(当院では14日前後での自宅退院を目指しています。自宅復帰が不安な方はリハビリ転院も可能です。)

 

AMISにデメリットは?

 ・全ての症例で手術が適応できるわけではない(筋肉質な男性、大腿骨頸部が短い方、股関節手術の既往がある方、高位脱臼をされた方などは従来の手術適応となる)

 ・大腿外側皮神経障害(しびれ)が生じる場合がある。(術後1年程度で多くの方が改善する)

 

 

AMISによる人工股関節手術は従来の手術(後方アプローチ)に比べて、メリットが多く、適応する患者さんにおいては、第一選択となりえます。

 

 整形外科 副部長 井本 光次郎(日本整形外科学会 整形外科専門医 他)
 股関節・膝関節ともに患者さんの病態に応じた治療法を提案します。