診療トピックス
        せん妄に関する取り組み
- 2025.1.7 |
 
せん妄とは・・・
もともとの脳機能の脆弱性があるところに、環境的・身体的な負荷が加わり意識障害が生じた状態です。 脱水・感染・貧血・薬剤など、身体の何らかの負担がかかった時に、脳にも負担がかかることで生じる『脳の機能の乱れ』(意識障害)をせん妄と言います。
せん妄の時に起こる変化や特徴とは
意識
- 
ぼーっとする
 - 
集中しづらい(テレビや新聞などを見ることができない)
 - 
夢か現実かわからない、寝ぼけたような感じ
 
睡眠
- 
眠りが浅くなる
 - 
日中、眠気が続く
 - 
昼夜逆転し、睡眠のリズムが崩れる
 
その他
- 
場所や時間がわからない
 - 
おかしなものが見える(虫、小さな動物、小人) など
 
ご家族から見ると・・・
- 
ぼんやりしている、うとうとしている - 
話のつじつまが合わない - 
場所や時間がわかっていない - 
点滴などのチューブ類を抜いてしまう - 
怒りっぽくなったり、興奮したり、涙もろくなる - 
見えないものを見えると言ったり、ありえないことを言ったりする - 
夜眠らない、夜になると症状が激しくなる - 
以前と性格が変わったように感じる 
せん妄の治療
- 1.負担となっているからだの問題を取り除く
 - 2.脳の機能の乱れを改善するための薬の処方
 - 3.患者さんが安心できる環境調整      
 
「気持ちの持ちよう」や「こころの問題」に思われがちですが、そうではありません。また、同様に認知症になったのでもありません。からだの症状のひとつなので、適切な治療でほとんどの患者さんは改善します。
せん妄の予防のためのお願い
適切な対応をすることで、せん妄は予防できることがわかってきています。そのためには、患者さん、ご家族、担当医や看護師、薬剤師と一緒に協力し合うことが重要です。

ご家族のみなさまへ
患者さんがせん妄の時には、意識が混乱し、今どこにいるのか分からなかったり、何をしているのかわからなかったりしています。そのため、患者さんご本人も不安になられていることが多く、ご家族がそばにいるだけで患者さんは安心されます。ご家族の接し方もいつもと変える必要はありません。
- 
つじつまの合わないお話があっても、無理に正す必要はありません。 - 
いつもどおり落ち着いた言葉かけをお願いします。 - 
時間や場所がわからないようであれば、教えてあげてください(時計やカレンダーは有効です)。
 - 
日中起きていられて、夜間に眠れるような働きかけも重要です。 - 
けがや事故防止のため、はさみや爪切りのような危険物の持ち込みはご遠慮ください。 - 
適切な刺激があることは重要です。眼鏡や補聴器がある場合はご持参ください。 
わからないこと、お困りのことはお気軽に担当医、看護師、薬剤部までご相談ください。
当院のせん妄に関する取り組みについて
当院におけるせん妄活動年表
当院では、2013年より国立がん研究センター東病院の支援を受け、DELTA(DELirium Team Approach)プログラムを導入し、せん妄対策を多職種でおこなっています。
DELTAプログラム
具体的にどのように多職種がそれぞれの専門性を活かして活動しているのかを次に示します。
DELTAプログラム
DELTAプログラムの効果:研究の紹介
DELTAプログラム導入における効果を示している研究です。
①せん妄の発症率の低下、②転倒や自己抜管などの有害事象の減少、③ベンゾ系薬剤の処方の減少、④退院時のADL改善、⑤入院期間の短縮がみられました。
院内せん妄ケア認定看護師の活動
当院では、2017年より院内せん妄ケア認定看護師制度を設け、より患者さんの病状に応じたせん妄ケアが実践できるように取り組んでいます。
現在、院内せん妄ケア認定看護師は15名おり、病棟を中心に活動しています。主な活動内容としては、病棟でのせん妄ケアの充実に向けた学習会やせん妄カンファレンスの開催などをおこなっています。
「当院におけるベンゾジアゼピン系薬剤使用量削減の取り組み」
当院の使用薬剤の状況
非ベンゾジアゼピン系薬剤の採用を増やし、ベンゾジアゼピン系薬剤の採用を削減いたしました。
ベンゾジアゼピン系薬剤 / 非ベンゾジアゼピン系薬剤 処方回数の推移(入院患者)
過去の医療連携研修会
当院では毎年、下記のような医療連携研修会を開催しています。
地域の医療機関スタッフの方々との連携を深め、皆様とともにせん妄ケアの充実に取り組むことで、継続した治療と看護が提供できればと考えております。
せん妄について関心がある医療機関の皆様のご参加をお待ちしております。
| 2024年 | Q&Aコーナー | 
 事前アンケートにてせん妄に関する疑問・困り事募集し、当院スタッフが回答することで地域医療機関との情報共有および疑問解決を図った  | 
| 2023年 | 症例検討会 | 
 武蔵ヶ丘病院のせん妄対策にかかる症例発表を基にせん妄評価や施設間の連携、職種間の連携について、当院スタッフとディスカッションを行った  | 
| 2022年 | 症例検討会 | 
 オピオイド使用症例について医師、看護師、薬剤師、心理士、セラピストそれぞれの立場から検討を行った  | 
| 2021年 | 基礎講座および症例検討会 | 
 第1回ではせん妄の概要、アセスメント・予防ケアの方法、薬剤、評価方法についての講座を開催し、第2回では他職種からの視点で症例検討を行った  | 
| 2020年 | 基礎講座 | 
 せん妄の概要、アセスメント・予防ケアの方法、薬剤、評価方法についての講座を開催  | 
| 2019年 | 基礎講座 | 
 せん妄の概要、アセスメント・予防ケアの方法、薬剤、評価方法についての講座を開催  | 
動画一覧
下記画像をクリックして動画視聴いただけます。(YouTubeを開きます)
当院のせん妄関連ポスター





