クローズアップ Close Up
国際救援活動
日本赤十字社の国際救援の基地として
- 私たちが考える国際医療救援
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国際医療救援の活動は、戦傷・災害外科とプライマリー・ヘルス・ケア(PHC)を原点とした医療が主となります。 古代ギリシャの医師ヒポクラテスが「外科医になりたければ戦場に行け」と述べたように、戦傷外科は創傷治療をいかに成功させるかという点で外科の基本です。
一方、PHCに携わることは、社会全体における医療の位置付けの理解に役立ちます。 すなわち、国際医療救援は、単に相手の救援活動を行うだけでなく、救援活動を通じて私達が現地の人々、現地の医療人から学ぶ貴重な機会です。 国際救援を通じて学んだことは、私達が日常行なっている先進医療を基礎からより充実させることに役立ちます。
つくる
救援機材の研究・開発
- ERU(Emergency Response Unit)とは?
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ERUとは、大規模災害が起こった際、被災者を迅速かつ効果的に救援するための、救援資機材と要員をあわせた国際医療救援チームの名称です。
- ERU資機材について
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当院は日本赤十字社のERU資機材(仮設のクリニックや病院を設置するための機材)の開発を続けています。
資機材には、医薬品の他、テント、発電機、給水機材、通信機材、生活物資等が含まれます。
日本赤十字社では、クリニック型・モバイル型・病院型の3種類のERU資機材を整備しています。
現在、日本赤十字社のERU資機材は熊本赤十字病院と大阪赤十字病院、シンガポールの倉庫で保管し、国内外の災害に備えています。 - 救援技術研究について
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当院は、国内外での救援活動を通して得た知見を、研究機関や民間企業との共同研究に活用してきました。水や電気がなくても可動するモバイルトイレや、電気で動く医療車、ドローンを用いた医薬品の搬送、携帯の位置情報を用いた災害時の孤立者の特定などの研究成果は国内外の救援の現場において、実践的な貢献を重ねています。

そだてる
国際救援要員の養成
- 国際救援要員・開発協力要員の養成システム
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日本赤十字社の国際救援・開発協力事業に参加するためには、外国語の習得の他、研修会への参加が義務付けられています。 当院は日本、アジア各国から参加者を募り、国際救援要員の研修や事業管理手法の研修などを開催しています。
その他、国際医療救援要員の研修会も行なっており、この研修会を修了した国内外の赤十字スタッフが海外の災害救援で活躍しています。
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国際医療救援(ERU)チームの研修会
日本赤十字社の海外医療救援チームの研修会を開催しています。 この研修会を修了した国内外の赤十字スタッフが海外の災害救援で活躍しています。
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事業管理手法の研修会
国際的な人道支援機関で標準的に使用されている事業管理手法(PCM手法)の研修を開催しています。
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海外での現地研修
各国赤十字が開催している様々な分野の研修会に要員を派遣し、各分野での専門家の育成にも力を入れています。
やくだてる
国際救援要員の派遣
- 要員の派遣
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当院は、昭和55年(1980年)から令和6年(2024年)までに294名の職員を国際赤十字の救援事業などに派遣しています。
要員派遣一覧(1981年~2023年)
派遣国 | 事業名 | 期間 | 人数 |
---|---|---|---|
シエラレオネ共和国 | シエラレオネ・中央こども病院サービス向上プロジェクト | 2023 | 2名 |
南スーダン共和国 | 南スーダン紛争犠牲者救援事業 | 2020/2021 | 2名 |
ナイジェリア連邦共和国 | ナイジェリア紛争犠牲者支援事業 | 2020 | 1名 |
ヨルダン・ハシミテ王国 | 中東地域紛争犠牲者支援事業 | 2020 | 1名 |
パキスタン・イスラム共和国 | パキスタン紛争犠牲者救援事業 | 2019 | 1名 |
レバノン共和国 | パレスチナ赤新月社医療支援事業 | 2019/2021 | 2名 |
バングラデシュ人民共和国 | バングラデシュ南部避難民保健医療支援事業 | 2019 | 1名 |
バングラデシュ人民共和国 | バングラデシュ南部避難民支援事業 | 2018/2019 | 10名 |
ネパール連邦民主共和国 | ネパール地震被災者救援事業 | 2016 | 7名 |
南スーダン共和国 | 南スーダン紛争犠牲者救援事業 | 2016/2017/2018/2019 | 6名 |
イラク共和国 | イラク紛争犠牲者救援事業 | 2015/2016/2018 | 5名 |
シエラレオネ共和国 | 小児看護技術強化事業 | 2015/2017 | 2名 |
ヨルダン・ハシミテ王国 | シリア難民救援事業 | 2015 | 1名 |
レバノン共和国 | シリア難民救援現地調査 | 2015 | 1名 |
ハイチ共和国 | ハイチ地震被災者救援事業 | 2015 | 1名 |
シエラレオネ共和国 | 母子保健医療支援調査事業 | 2015 | 2名 |
ニカラグア共和国 | JICAインターンシッププログラム | 2014 | 1名 |
フィリピン共和国 | 世界保健機構(WHO)西太平洋事務局派遣 | 2014 | 1名 |
フィリピン共和国 | 基礎保健RDフィリピン南部台風災害救援事業 | 2014 | 2名 |
フィリピン共和国 | フィリピン台風救援事業 | 2014/2015 | 5名 |
イラク共和国 | クルド地域医療市場調査班 | 2013 | 2名 |
ウガンダ共和国 | ウガンダ北部地区病院支援事業 | 2013 | 1名 |
ハイチ共和国 | コレラ罹患者救援事業 | 2012 | 5名 |
ハイチ共和国 | ハイチ大地震救援事業 | 2011 | 9名 |
中華人民共和国 香港 | 基礎ERU研修会開催協力 | 2010 | 6名 |
チリ共和国 | チリ地震被災者救援事業 | 2011 | 3名 |
チリ共和国 | チリ地震被災者救援事業 | 2011 | 3名 |
パキスタン共和国 | パキスタン紛争犠牲者救援事業 | 2010 | 1名 |
ジンバブエ共和国 | コレラ被災者救援事業 | 2009/2010 | 7名 |
イラン共和国 | 在外邦人救急法等普及事業調査 | 2009 | 6名 |
ミャンマー連邦共和国 | サイクロン被災者救援事業 | 2009 | 1名 |
イラク共和国 | イラク医療技術交流事業 | 2008/2009/2010/2011 2012/2013/2014/2015 |
54名 |
スリランカ民主社会主義共和国 | スマトラ島沖地震津波復興被災者救援事業 | 2008 | 1名 |
ケニア共和国 | ケニア共和国洪水災害救援事業 | 2007 | 1名 |
インドネシア共和国 | ジャワ島中部地震被災者救援事業 | 2007 | 2名 |
パキスタン共和国 | パキスタン地震被災者救援事業 | 2006 | 9名 |
インドネシア共和国 | スマトラ島沖地震津波復興被災者救援事業 | 2006 | 20名 |
イラン共和国 | イラン南東部地震被災者救援事業 | 2005 | 6名 |
イラク共和国 | スレイマニア教育病院医療技術支援事業 | 2004/2005 | 5名 |
イラン共和国 | イラク人道危機関連調査 | 2004 | 2名 |
タンザニア共和国 | タンザニア難民支援事業 | 2004/2007/2008 | 3名 |
リベリア共和国 | リベリア紛争犠牲者救援事業 | 2003 | 1名 |
イラン共和国 | イラン地震被災者救援事業 | 2003/2004/2005 | 5名 |
ジンバブエ共和国 | HIV/AIDS支援事業調査 | 2003/2004/2005 | 6名 |
インド | インド西部地震被災者救援事業 | 2002 | 9名 |
エルサルバトル共和国 | 地震被災者救援事業 | 2002 | 1名 |
ペルー共和国 | 地震被害調査 | 2002 | 2名 |
シエラレオネ共和国 | シエラレオネ紛争犠牲者救援事業 | 2002 | 1名 |
アフガニスタン共和国 | アフガニスタン地震被災者救援事業 | 2002/2004 | 9名 |
インドネシア共和国 | スマトラ島ベングル沖地震被災者救援事業 | 2001 | 1名 |
東ティモール民主共和国 | 東ティモール紛争難民救援事業 | 2000/2001/2002 | 5名 |
台湾 | 台湾地震被災者救援事業 | 2000 | 4名 |
スーダン共和国 | スーダン紛争犠牲者救援事業 | 2000 | 1名 |
トルコ共和国 | トルコ地震被災者救援事業 | 2000 | 1名 |
アルバニア共和国 | アルバニア・コソボ難民救援事業 | 2000 | 1名 |
アフガニスタン共和国 | アフガニスタン北東部地震被災者救援事業 | 1999 | 1名 |
ルワンダ共和国 | ザイール東部紛争犠牲者救援事業 | 1997 | 1名 |
ケニア共和国 | 紛争犠牲者救援事業 | 1997 | 1名 |
ザイール共和国 | 紛争犠牲者救援事業 | 1995 | 1名 |
カンボジア王国 | 医療協力事業 | 1993 | 2名 |
シリア・アラブ共和国 | 湾岸戦争避難民救援事業 | 1992 | 2名 |
ケニア共和国 | ケニア紛争犠牲者救援事業 | 1991 | 1名 |
ソビエト社会主義共和国連邦 | 地震被災者復興事業 | 1990 | 1名 |
パキスタン共和国 | アフガン難民救援事業 | 1990/1994/1995/1997/2002 | 6名 |
ネパール連邦民主共和国 | 保健衛生事業 | 1987/1993 | 2名 |
スーダン共和国 | 干ばつ被災者救援事業 | 1986 | 1名 |
エチオピア連邦民主共和国 | 干ばつ被災者救援事業 | 1985 | 1名 |
マレーシア | ベトナム難民救援事業 | 1981/1988/1989 1990/1991/1993 |
12名 |
タイ王国 | カンボジア難民救援事業 | 1981/1983/1990 | 10名 |
国内救援活動
- 絶え間なく発生する自然災害に備えて
- 基幹災害拠点病院
当院は、熊本県の「基幹災害拠点病院」に指定されています。 基幹災害拠点病院は、県内や近県で地震・津波・台風・噴火等の災害が発生した場合に、災害医療を実施する地域災害拠点病院の機能を強化し、災害医療に関して県の中心的な役割を果たすもので、原則として都道府県に1ヶ所設置されています。
当院では、災害時においても切れ目のない医療を提供できるよう医療設備の備えやライフラインの確保、多数傷病者の受入れに関する訓練の実施など、さまざまな対策を行っています。
熊本赤十字病院は災害に8つ備えています
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01
- 水
- 3日分
353.2平方メートルの大容量で、院内生活用水を約3日分蓄えることができます。
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02
- 食料
- 3日分
地下と8階の2か所にある食料用倉庫に患者食3食分×3日分を備蓄しています。
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03
- 電力
- 3,178kw
非常用発電機を本館、救急棟、立体駐車場に設置し、停電時には自家発電に切替わることで、診療に必要な電力を継続して供給します。
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04
- ヘリ
- 常時
救急医療の専門医と看護師が同乗し、救急現場へ向かい、いち早く患者さんに救命医療を行います。
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05
- 救援物資
- 全国
全国各所で発生した災害に迅速に対応できるよう平時から十分な物資を備蓄し、被災地へ支援することを目指しています。
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06
- 院内設備
災害発生時や感染症患者発生時などに患者収容スペースや診療スペースとして活用できるよう、整備しています。
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07
- 特殊車両
重篤傷病者に対し救命率を向上させるための効果的な初期治療を目的とした、特殊医療救護車両(ディザスターレスキュー)を整備しています。
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08
- 人
- 全職員
わたしたちは、苦しんでいる人を救いたいという思いを結集し、いかなる状況下でも、人間のいのちと健康、尊厳を守ります。
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訓練・研修