産婦人科 Obstetrics & Gynecology
熊本赤十字病院では、思春期、若年成人から高齢の女性の疾患まで幅広い患者さんに適切な医療を受けていただけるよう、豊富な臨床経験に基づき、様々な疾患に対応しています。特に婦人科領域では、内視鏡手術、悪性腫瘍、周産期医療に力を入れています。総合病院であることを生かし、様々な合併症を抱える患者さんにも対応可能です。
また、当院は腹腔鏡下手術を数多く施行しており、患者さんに低侵襲の医療を提供することにも取り組んでいます。
婦人科疾患
卵巣腫瘍や子宮筋腫、子宮脱といった良性疾患から、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんなど婦人科悪性疾患まで幅広く対応しています。手術を中心とした治療を行っているほか、悪性疾患に対しては、放射線科、血液腫瘍内科とも連携し、集学的治療にも取り組んでおり、患者さんの状態に合わせた適切な医療を心がけています。
内視鏡手術
低侵襲な内視鏡手術は、整容性に優れ、疼痛が少ないため、入院期間が短く、早期の社会復帰が可能となっています。日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医が中心となり、低侵襲な内視鏡手術として、腹腔鏡下手術、子宮鏡下手術に積極的に取り組んでいます。腹腔鏡下手術は子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科良性疾患を中心に、これまでに8000件以上の手術を施行しています。早期の子宮頸がんと子宮体癌に対しても、施設認定を受けており、腹腔鏡下子宮体がん根治術、腹腔鏡下広汎子宮全摘出術を行っています。2019年3月からは熊本県内産婦人科で初となるロボット補助下腹腔鏡下手術 (ダヴィンチ) も開始し、子宮筋腫などの良性子宮疾患と早期の子宮体がんの患者さんの治療の選択肢としています。子宮粘膜下筋腫や子宮内膜ポリープに対して約1000件の子宮鏡下手術を行っており、外来の日帰り手術や短期間の入院手術を施行しています。
周産期医療
母子ともに安心して出産に臨めるよう、質の高い医療を提供しています。大きな問題がなく妊娠が経過しているお産はもちろんのこと、熊本県地域周産期母子医療センターとしてハイリスクの妊娠・分娩も取り扱っています。特に妊娠糖尿病などの合併症妊娠については、総合病院であることを生かし、産婦人科、小児科、内科、麻酔科、放射線科などと連携を取りながら、妊婦さんが安心して安全にお産ができるよう取り組んでいます。
また、すべての妊婦さんを対象に、医師と助産師による「チーム健診」を行っています。チーム健診とは、普段は医師による妊婦健診を受けられている方も妊娠20週後半と30週後半の2回、日本助産評価機構の認定を受けたアドバンス助産師が妊婦健診を行います。妊娠中のちょっとした心配事も相談でき、安心して出産に臨めるようにサポートします。
その他、院内助産システムも開設しており、アドバンス助産師を中心に、助産師外来、母親学級、マタニティビクス、マタニティヨガ、乳房外来、産後育児相談なども行っています。
赤十字病院でお産をお考えの方
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「初診時の紹介状について」
当院でお産をご希望の場合は、「紹介状」がなくても受診が可能です。
※休診日や初診時の選定療養費については、
「一般外来受診のご案内」はこちら
「一般外来受診のご案内」をご覧ください。
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院内助産システム
院内教室
専門外来
- 助産師外来
- 助産師外来を希望された妊婦さんで、経過の順調な方が対象になります。
健診の内容は医師の診察と変わりありませんが、助産師がゆっくりと保健指導を含めながら健診を行います。 - くわしくはこちら
- 乳房外来
- 乳房トラブルの際は、状況を確認後に来院いただき、乳房マッサージを行います。また、母乳についての相談、断乳の相談もお受けいたします。
- 産後育児相談
- 退院後の赤ちゃんの体重測定・黄疸チェック・おっぱい量測定・困ったことや不安に思ったことなど助産師が相談をお受けします。
- 産後ケア
- 当院では令和3年6月1日より熊本市の委託を受けて、産後ケア事業を開始することとなりました。産後の生活や子育てに不安がある方、ほっと一息つきたい方はぜひご利用ください。当院にはアドバンス助産師が在籍しております。その他、医療保育専門士や公認心理師、管理栄養士も在籍しており、必要時は連携を図ることができます。
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情報発信
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主な疾患・治療法
症状
初期には症状がありません。ある程度進行すると性器出血を認めるようになります。よって、初期にがんを見つけるためには子宮頸がん検診を受けることをお勧めします。
検査
子宮頸部細胞診、コルポスコープ、子宮頸部生検、MRI、CT。
治療
進行期によって治療法は異なります。子宮頸部上皮内腫瘍(いわゆる前癌病変)およびⅠA1期では子宮頸部円錐切除術、あるいは単純子宮全摘出術を行っています。ⅠA2~ⅡB期は広汎子宮全摘出術といって、子宮、両側卵巣卵管、腟および骨盤内のリンパ節を含め、広く子宮を取る手術を基本としています。早期の子宮頸がんに対しては腹腔鏡下手術を行っており、熊本県内で唯一熊本赤十字病院でのみ実施しています。合併症などの病状やⅢ、Ⅳ期の患者さんには状態に応じ、放射線療法、化学療法、CCRTを行っています。
症状
不正性器出血がみられることがありますが、初期には症状がないこともあります。
進行すると、腹痛がみられることもあります。
検査
子宮内膜細胞診、子宮内膜生検、経腟超音波検査、MRI、CT。
治療
基本的には手術療法となり、単純子宮全摘出術、両側卵巣卵管切除、リンパ節郭清を行います。当院では早期の子宮体がんに対する腹腔鏡下手術(腹腔鏡下子宮体がん根治術)、もしくはロボット支援下子宮体癌根治術を受けることが可能です。患者さんの状態により、化学療法、放射線治療を選択することもあります。
症状
初期には症状がないことがほとんどです。人間ドックや内科健診の超音波検査で偶然見つかることがあります。進行すると、腫瘍の増大や腹水貯留に伴う腹部膨満感が出現します。
検査
経腟・経腹超音波検査、MRI、CT。
治療
基本的には手術療法となります。両側卵巣卵管切除、単純子宮全摘出術、リンパ節郭清、大網切除が標準術式とされていますが、必要に応じて、腸管の腫瘍を同時に切除するなど腹腔内の癌を可能な限り切除します。病状により、術前、術後の化学療法を行なう場合もあります。最近では適応を判断し、免疫抑制剤による治療も開始しています。
AYA世代と言われる思春期、若年成人に対する卵巣がんに対しての妊孕性温存手術(子宮を温存し、妊娠の可能性を確保する治療)も行っています。
症状
掻痒感、皮膚潰瘍、疼痛、帯下異常などがみられます。
検査
細胞診、病理組織診断、血液検査、MRI、CT。
治療
手術療法を基本としています。病巣とその周りを切除する局所切除、外陰全体を切除する単純外陰切除術を施行しています。また、形成外科と連携し、創部機能保全に努めています。病状により、放射線治療を選択することがあります。
症状
過多月経、過長月経、貧血、月経痛、腹満感、腫瘤感を自覚することがあります。
検査
経腟超音波検査、MRI、血液検査。
治療
症状がみられる場合には手術を考慮します。術式には子宮摘出術と、妊孕性温存を目的とした筋腫核出術があります。子宮の大きさにもよりますが、患者さんに負担の少ない腹腔鏡手術を積極的に取り入れ、入院期間の短縮を図っています。また、ロボット支援下の手術を受けることも可能です。症状が強くない場合、閉経が近い場合には経過観察することもあります。状態により、ホルモン治療を行いコントロールすることもあります。
症状
過多月経、過長月経、貧血、月経痛、腹満感、腫瘤感を自覚することがあります。
検査
経腟超音波検査、MRI、血液検査。
治療
手術療法と保存的治療があります。手術療法の場合、子宮摘出、筋腫のみ摘出、もしくは腺筋症で子宮筋層が肥厚した部分を核出する方法があります。いずれも腹腔鏡下手術が可能となっています。保存的治療としては、対症療法(鎮痛剤や鉄剤などの内服)もしくはホルモン治療を行います。
症状
無症状のことが多いです。ある程度増大すると、捻じれること(捻転)により、急激に自制不可能な腹痛が出現することがあります。増大すると腹満感を自覚することもあります
検査
経腟・経腹超音波検査、MRI、CT、血液検査。
治療
大きさにより治療法は変わります。腫瘍径が6㎝以上を超えると、捻転のリスクが増加するため、手術の適応となります。術式は病態、年齢により異なり、卵巣腫瘍のみの摘出、もしくは卵巣卵管の切除を行います。この手術でも腹腔鏡下の手術を行っています。妊娠を契機に卵巣腫瘍が発見される方もいますが、妊娠中の方にも腹腔鏡下手術は可能で、母児ともに低侵襲の医療の提供を可能としています。
症状
月経痛、排卵痛、便秘、慢性骨盤痛、腰痛などがみられます。卵巣にできるチョコレート嚢腫がよく知られていますが、どこにでも発症しうる病気で、骨盤内に強い癒着を起こすことも多いです。
検査
経腟超音波検査、MRI、血液検査。
治療
保存的治療と手術療法があります。保存的治療の場合、鎮痛剤による対症療法やホルモン剤による内分泌療法があります。
手術療法では、卵巣にチョコレート嚢腫があれば嚢腫を摘出し、そのほかの部位の子宮内膜症であれば病巣の切除を行います。
特に、内膜症による骨盤内の癒着は強い月経痛の原因となっていることが知られています。
従来開腹では骨盤の深いところまでの病巣切除は困難でしたが、腹腔鏡を用いることにより癒着を剥離、病巣の切除を行うことで、患者さんの疼痛改善に高い効果を得ています。
症状
骨盤臓器の脱出感、頻尿、排尿困難、不正性器出血などがみられます。
検査
経腟超音波検査。
治療
保存的治療と手術療法があります。保存的治療の場合は腟内にリングを挿入し、子宮腟部を支持して症状を抑えるようにします。根治的な治療として、経腟的に子宮摘出し、腟壁縫縮術や、腟閉鎖術、また、腹腔鏡ロボット手術を行ってきましたが、2023年からは経腟的腹腔鏡手術(vNOTES)も積極的に施行しています。
症状
腹痛、不正性器出血、無月経などがあります。初期には無症状のこともあります。破裂すると腹腔内に大量出血をきたすことがあります。
検査
経腟超音波検査、血液検査。
治療
手術療法が基本で、腹腔鏡下で行うことが可能です。緊急性の高い疾患であり、当院でも緊急対応可能となっています。ほとんどが卵管妊娠であり、術式は基本的には妊娠側の卵管を切除することになりますが、病状により卵管を温存し、妊娠箇所のみを取り除く手術も行っています。また、症状が安定している場合は、待機療法を行うこともあります。
症状
持続する腹緊、性器出血、胎動減少などがみられます。母児ともに命に係わる病態であり、緊急性が非常に高い疾患です。
検査
経腹超音波検査、胎児心拍陣痛図、血液検査。
治療
診断がつき次第、直ちに出産の必要があります。分娩方法は帝王切開術となります。緊急性が高く、早期の児の娩出が必要となるため、速やかに麻酔を行う必要があり、全身麻酔での手術となります。総合病院であることを生かし、出産時は産婦人科、麻酔科、小児科医、助産師が連携し、母児の救命に取り組みます。
症状
基本的には無症状ですが、性器出血が出現することがあります。大量出血となることもあります。前置胎盤の場合、胎盤が子宮に癒着し、分娩後の胎盤娩出が困難となることがあります。
検査
経腟・経腹超音波検査、MRI検査。
治療
子宮口を胎盤が覆っている状態であり、子宮口開大時に大出血をきたすため、陣痛発来前に帝王切開を行います。
基本的には下半身麻酔となりますが、母児の状況により全身麻酔となることもあります。術中出血が多くなることが予想され、輸血を必要とすることも多いため、前もってお産までにご自身の血液をためていただき、出産に備えることが多いです。