熊本赤十字病院

新型コロナウイルスに関するお知らせ

Specialized outpatient

災害時のトイレ問題の解決を目指す取り組み

これまで国内で発生した大災害時には、多くの避難所でトイレの問題が発生しました。

避難所のトイレがその機能を停止したり、衛生管理ができていないことから、被災者が水分摂取や排泄を抑制することで、

深刻な健康被害が生じています。また、海外では、国際支援部隊の宿営地のトイレから感染症が流行した事例も

報告されており、救援団体にとっても被災地での衛生管理は大きな課題です。

当院は、国際医療救援拠点病院として、2004年から日本赤十字社基礎保健ERU(緊急対応ユニット)資機材の

研究開発に着手し、新潟県中越地震ではERU資機材を用いた仮設避難所の開設による被災者支援を実施、

2012年には、移設可能な自然エネルギー蓄電システム、水洗トイレ、循環式シャワーのようなインフラ機能を、

学校、病院、公共施設等の災害時に避難所として機能する災害拠点に普及させ、普段使いするアイディア

「スマートデザインシェルター構想」を提案しました。さらに、この構想の実現に向けて、同年、

九州電力株式会社総合研究所と共同研究に関する協定書を締結しました。

そして、このたび、この共同研究を引き継いだニシム電子工業株式会社様(九州電力グループ)の協力により、

移動式水洗トイレが完成しました。

 

 

このトイレは、最新の浄化処理技術と太陽光蓄電システムを備えており、停電後一定時間は蓄電池で運転が可能です。

水洗された排泄物はトイレ内で生物分解され、フィルターを通じて浄化された水が再び洗浄水として利用されます。

このように、このトイレは、電源設備と下水道から独立した革新的なトイレで、災害対応、インフラ老朽化、

自然公園での環境問題等、様々な社会問題の解決に貢献することが期待されます。

昨年発生した九州北部豪雨災害被災地の福岡県朝倉市杷木の災害復旧活動拠点で実施した実証試験では、

2ヶ月間で約1,700人の災害ボランティア等の方々に使用いただきましたが、一律排水基準内の水質を保持し、

良好な結果を得ました。

このトイレは2018年2月8-9日にパシフィコ横浜で開催される第22回震災対策技術展に出展されます。

当院は、今後も、国内外の多くのパートナーと連携し、人々の苦痛を軽減し、

尊厳を保つための技術の研究開発に取り組んでいきます。